ありがとう!TVガイド17号 TV連動企画 巻頭特集インタビュー 春野 真徳さん

2026年8月20日

-創立20 周年おめでとうございます。率直に今のお気持ちをお聞かせください。
春野真徳(以下称略)
 ありがとうございます。自分の中ではまだ通過点ですが、創業時を思うと、よくここまで続けられたな、と深く実感しています。目の前の仕事に一生懸命取り組んできた結果ですね。がむしゃらに走り続けてきた20 年でした。

-走り続けてこられた原動力は何でしょう?
春野
 一番は受講者の皆さんの声です。研修後「よかった」「役に立った」と言ってくださるたびに「次も頑張ろう」と思えました。その感謝の連鎖が続いて今日に至っています。

-そもそも創業当時は、どのような思いで会社を立ち上げられたのですか?
春野
 会社にする前は3 年半ほど個人事業主として活動していました。仕事も軌道に乗って満足しかけていた時、妻から「今の状態で満足しているの? 本当にやりたかったことは違うでしょ」と言われハッとさせられたんです。個人で稼ぐだけでなく、法人として社会に貢献する存在にならなければいけないと。妻の一言が私の忘れていた初心を思い出させ背中を押してくれました。

-法人化へと舵を切る際、不安はありしたか?
春野
 「ちゃんと稼ぎ続けられるか」という不安は大きかったです。でもお金の不安に囚われすぎるとビジョンが見えなくなります。当時は未熟で壁にもぶつかりましたが、行き詰まった時ほど「来年、再来年のこと」をあえて考えるようにしていました。未来の理想像を描くことで今の苦境を乗り越えるエネルギーに変えていました。

-組織として動き出すにあたり、大切にしていた価値観はありますか?
春野
 「お取引先とは対等にお付き合いをする」ということです。主従関係は絶対に作らないと心に誓っていました。当時のビジネス環境ではなかなか難しかったのですが、言うべきことは言おうと。ある時、元請けからクライアントへのお茶くみを命じられた際、「そういう雑用をするために独立したのではない」とはっきりと抗いました。別件で似たようなことがあった時「そんなことをしていたら仕事をなくすよ」と忠告されることもありましたが、後悔はありませんでした。「仕事がなくなるなら、意地でも他で探してやる」と覚悟が決まりました。健全な関係で繋がれない仕事なら、どのみち長続きしないだろうと。

-これまでで、一番の「苦労話」といえば?
春野
 最も苦しかったのは、1 年目の終わりから2年目にかけてです。設立当初は周囲が「お試し」で仕事をくださるのですが、成果を残せないと次が続きません。当時は経験も浅く波が激しかった。その結果、1 年目の年末には貯金が10 万円に。5 人家族の生活費やローンの支払をどうしたらいいのか。人生で初めてキャッシングで40 万円を借り入れたのですが、その時キャッシュカードを持つ手がぶるぶると震えていました。「本当に返せるのだろうか」と、強烈な恐怖に襲われました。

-そこまでの状態から、どのようにして立ち直られたのですか?
春野
 「組織に戻る」という選択肢はなかったので前に進むしかありません。「来年はもっとたくさんの人に会って営業をかけるぞ!」と裏付けのない自信のようなものがありました。私は当時から、自分の中からアイデアが尽きたら、この業界から去ろうと考えていました。裏を返せば、アイデアがある限りはやっていけると考えてました。20 年経った今、むしろ当時より幅広いアイデアが次々と湧き出てきます。だからこそ、今でも「まだまだやれる」と思えるのです。

-スタッフの皆様を拝見していると、本当にのびのびとされている印象があります。
春野
 私自身がそもそも自由に生きたい人間です。理不尽に窮屈な枠に押し込められるのが大嫌い。だから自社においても最低限のルールはあっても、基本的には自由でありたい。社員の皆にも自由な発想で仕事に取り組んでほしい。一人ひとりが能力を発揮できないと一緒に働く意味がありません。以前、13 クラスの研修を同時スタートさせる大案件がありましたが、進め方はそれぞれの講師のスタイルに完全に任せました。個性を尊重し、自由にやってもらうことが一番良い結果を生むと信じています。

-お客様や受講者の皆様に対して大切にされていることは何でしょうか?
春野
 楽しく仕事をしたいという大前提があります。「春野と関わると仕事が楽しいよね」と言っていただける関係を作りたい。そのためには研修そのものの充実が不可欠です。受講者が自由な意見を交わし、納得感を得られる場を作ることで本当の楽しさが生まれます。「プロセスを楽しくすること」と「高い成果を上げる手法」は両輪です。楽しく取り組むからこそ良い成果が出て、成果が出るからさらに充実する。この好循環は、個人の成長も組織の活性化も全く同じです。

-これからの研修の方向性として、特に注力したい領域は?
春野
 『自律と協働の組織づくり』にすべての経験を集約させていきます。私がこの業界に入った30年前はバブル崩壊直後で、「働くことは辛く耐えるもの」という価値観が主流でした。研修で「仕事は楽しいものです」と言うと、受講者から拒絶されたこともありました。しかし、決してそうではない。仕事の中に楽しみを見出し、成果を上げ、深い充実感を得る。そのような組織を日本中に増やしていきたい。これが私の生涯のミッションです。

-これまでの20年間の中で特に印象深いエピソードを教えてください。
春野
 創業して間もない頃、ある課長層向け研修で、受講者から「あなたのマネジメントは古い。私は受け入れない」と言われたんです。そこから毎セッション彼が食ってかかってきて激しいディスカッションが巻き起こりました。私も若かったので正面から応戦し周りが仲裁に入るほどぶつかり合いました。その研修はそのまま終わったのですが、約3 年後、同じ企業の部長層向け研修の教室で彼と再会したんです。思わず身構えました。すると彼が歩み寄ってきて、私の目を真っ直ぐ見て「春野さん、あの時の課長研修、実はものすごくタメになっていたんです。あの研修で深く考え抜いた経験があったから、頑張れてこうして部長になれました。本当にありがとうございました」と深く一礼してくれたんです。涙が出そうなくらい嬉しかった。あの時、本気で向き合って本当によかったと思えた瞬間です。

-さらにその先の30 周年に向けたこれからの10年間、どのような挑戦をされますか?
春野
 大きく三つのテーマがあります。一つ目は『自律と協働の組織づくり』のメソッドを体系化し、人手不足や離職に悩む組織へ届けていくこと。二つ目は、この日本流の組織づくりメソッドをASEAN 諸国をはじめとする海外へ発信していくことです。アジアの優れた組織マネジメントを欧米諸国へと輸出することもできると考えています。同時に「組織づくり」の取り組みに使用する「カード教材」を100 種類開発することも目標としています。そして三つ目が後継者の育成です。私も59 歳になり、次の世代へバトンを渡す準備をしなければなりません。弊社には若い優秀な講師やスタッフが育ってきています。彼らが人気講師への階段を駆け上がっていける活躍の場を作り、その中から会社を引っ張るリーダーが出てくることを期待しています。体力がある限り70 歳くらいまでは現役として全力で走り続けるつもりです。

-最後に、この20 年間を支えてきてくださった方々へメッセージをお願いします。
春野
 ビジネスの基盤を作ってくださった恩人たちには感謝してもしきれません。研修業界のノウハウを教えてくれた前職の社長。独立して最初に発注をくれたビール会社の当時の部長。私の仕事観を180度変え、世界を広げてくれた編集プロダクションの社長。何より、私の人生最大の転機となったのは、志方さん(インタビュアー)のお父様との出会いでした。研修スタイルに共感し、「弟子にしてください」と懇願した私に「そろそろ若い人に引き継ぎたいと思っていたんだ」と、すべてのコンテンツを授けてくれました。お父様が提唱していた「メダカの学校※」こそが、弊社の『自律と協働の組織』の原点です。いただいた恩を次の世代へと繋ぐ『恩送り』をしながら、皆様に感謝を伝え、歩んでいきたいと思います。

-素晴らしいお話をありがとうございました。これからのさらなる飛躍を楽しみにしております。

※メダカの学校の歌に♪だれが生徒か先生か みんなでお遊戯しているよ♪の一節があります。このような組織を目指そうという意味があります。

その他のインタビュー

ありがとう!TVガイド16号 TV連動企画 巻頭特集インタビュー 佐々木 貴さん

プロレス団体「プロレスリングFREEDOMS」の代表として、選手でありながら経営者としても現場を支える佐々木貴氏。団体名に込めた「自由」への思い、仲間との信頼関係、そしてコロナ禍での興行継続という決断。経営者としての覚悟を持ってプロレスに向き合い続ける佐々木氏へのインタビューです。

ありがとう!TVガイド第16号巻頭特集インタビュー 関 俊一さん

企業のグローバル人材育成を支え続けてきた株式会社アクト。今、世界で活躍する人材に必要とされるのは英語力に加えて“多文化”理解と“伝える力”。関俊一社長に創業25周年を迎えたアクトのミッション、成長と楽しさを両立する組織づくりについて、代表取締役の関俊一さんに語っていただきました。