ありがとう!TVガイド第13号巻頭特集インタビュー 岩井 俊憲さん

2019年6月1日

春野 昨今、組織を取り巻く環境が大きく変化してきております。例えば、外国人労働者の問題や時短・働き方改革への取り組み。まさに今も、人事や総務部門の担当者が一生懸命取り組んでいます。そのような中で、私たち、研修やコンサルを行なう中で、「理想の組織」を描きながら取り組みをする必要があると考えています。

春野 岩井先生も「理想の組織像」をお持ちかと思いますが、先生が描く理想の組織像とはどのようなイメージでしょうか?

岩井 私は、理想の組織像を「ピラミット型」ではなく、「ジャズバンド型」と考えています。「ジャズバンド型」は個々人がプレイヤーとして独立しています。プロジェクトにより集まり、調和や協力を基本としています。 春野さんとも共通する考え方だと思いますが「自律的組織」。そのあたりが私のイメージです。誰かに頼るのではない、待つのではない、自ら発信もするし、自ら影響力を与える、影響力も受ける。それらの関係性の中で自律的な取り組みができている組織が理想だと考えています。

春野 一方で自律的ではない組織が残念ながら多いという現実もあるのように思います。

岩井 「指示→命令」的な組織形態の視点から見ますと、役割としては必要かと思います。目的、目標に沿った一貫した流れは必要です。しかし、それを自分でどう受け止めて、自分の中でどうこなすか、それはまさに自律的に進めるべきだと思います。

春野 昨今「働き方改革」が声高に叫ばれており、総務や人事は「早く帰宅しましょう」と号令をかけて一生懸命に取り組んでいますよね。しかし、私はフォーカスすべきところが違うのではないかと思っています。岩井先生は、本当の意味での「働き方改革」とはどのように考えられていますか?

岩井 「働き方改革」とは、独立したものではなく「生き方改革」の中にあるものだと思っています。生き方そのものが問われているのであり、その中に働き方もありますし、家庭の運営もあるでしょう。 「働き方改革」で、「早く帰宅しましょう」と呼びかけられていても、実際には早く帰れない、接待など帰りにお酒飲んで酔っぱらって帰る、というのが本当に健全な「働き方改革」「生き方改革」と繋がるのでしょうか、そういう気持ちもあります。総合的な改革の中で「働き方改革」を考える必要があると思っております。

春野 各企業では、「時短」に取り組んでいますが、「時短」というのは「働き方改革」の中のどういう位置づけにあると思いますか?

岩井 「時短」は手段だと考えています。OECDの調査でも、日本の生産性が、かつてないくらい下がってきています。主要先進7カ国(G7)で最下位レベルでしょう。これは「時短」の問題だろうか、という気もします。 いわゆる生産性と人間性の折り合わせをして、どのように組織展開するのかが大事であって、「時短」という手段に拘ることが果たしてどうなのか、それだけではないと思っております。

春野 人を大事にすること。意欲が高まらないと生産性は上がりにくいものですからね。結果としての「生産性」であり、「時短」であると思います。

春野 先ほど「自律的な組織」というお話が出てきました。そこで、組織において「自律」を実現するためには、一人一人が能力を発揮できる職場が大事かと思います。能力が発揮できる職場とはどのような職場と思われますか?

岩井 人は、一人一人がユニークな存在です。ユニークを認めることであると思います。心理学の実験結果では「みんなでなんとかしよう!」となることに対する警告であるのですが、フランスの農学者リンゲルマンによる「綱引き実験」があります。1対1での綱引きのパフォーマンスを100%とします。それが、2人一組になると93%、3人一組になると85%、8人一組になると49%になってしまいます。つまり、8人で4人分の力しか出せていません。これはみんなでやるということではなく、個性に基づいた配分が大事ということです。役割分担が活かされる。役割を固定する必要もなく交替し合えることが望ましい組織像ですね。

春野 個性に合わせて役割分担ができており連携が取れていると目的に向けて大きな力になっていくということですね。

岩井 それこそが「ジャズバンド型」です。それぞれが個々のプレイヤーです。演奏会では、ある場面ではドラムが主役になったりしますが、ドラマーが急にギターを弾くということではないと思うんです(笑)

春野 「能力を発揮できる職場」のお話をいただきましたが、職場をつくるリーダーは影響力があります。そのリーダーはメンバーに対してどのような働きかけをしたら「能力を発揮できる職場」になるのでしょうか?

岩井 メンバーを「勇気づける」ことです。リーダーは、結構「勇気くじき」をやっています。ダメ出しや人格否定をした結果、部下との関係性は悪くなります。ダメ出しを中心とした「勇気くじき」ではなく、良い点、個性を認める「勇気づけ」を広く組織に発信して行きたい、ということでもう何十年もやっています。いくらかは成果が出てきてはいますが、まだまだこれからだと思っています。

岩井 「共感」「尊敬」「信頼」「協力」、この4つが組織運営、カウンセリング、リーダーシップにおいても重要なキーワードになると思います。それと世の中には「目標」を分かっていても「目的」を知らない人がいます。つまり「目標」と「目的」の違いを答えられない人が多い。 わが社の目的は「○○億の企業になること」…これは「目的」ではないんですね。数値目標はありますが、数値目的とは言いません。自社は何のために存在するのか、何処に向かうのか、これらがきちんと構造化されていて、それを基に「共感」、「尊敬」、「信頼」というものが成り立つものだと考えています。

春野 本日はどうもありがとうございました。

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